「買ってはいけない Part2」では、前作「買ってはいけない」で取り上げた商品がその後どうなったかをリポートしている。そして、いくつかの製品が変わったとされている。これは、著者らの影響もあるかもしれない。しかし、書籍の中で「悪い、悪い」と書かれ商品イメージが悪くなったので変えたとか、自然=安全のドグマに迎合しただけのことではないだろうか?。まあ、著者らの目的は製品を変えることにあるのでこれでも目的を果たしたことにはなる。しかし、企業は、イメージをよくするとか、世間に広まっているドグマに受け入れられやすくしただけのことであって、使っているものが危険だと認識して(そもそもそんなに危険な物は使っていないものが多かった)、成分などを変えたわけではない。場合によっては、「化学調味料」と言う言葉を「うまみ調味料」と言葉を変えるだけのようなことだって起こっている。
それに、「トップ企業が製品を変え、それに2番目以降の企業が習い」というが、日本社会が横並び社会だとしても、本当にこんなことは起こるのだろうか?。イメージを悪くすることによって、トップ企業の製品の売り上げが落ちれば、2番目の企業が喜ぶだけではないだろうか。
商品名と共に買ってはいけないと言う強烈なメッセージが記事にはある。著者らは、商品に含まれている成分がいけないから、買ってはいけないと主張しているのだが、この書き方では、読後、容易に、商品=買ってはいけないと、短絡して理解されてしまうのではないだろうか。つまり、その商品だけを買わなければよいと理解されてしまうのではないだろうか。さらに、伝聞するに従って、文章的に長い理由の部分は捨象され、やはり、商品=買ってはいけない、と短絡した形で伝わっていくのではないだろうか。これでは、著者らの本当の(?)主張は理解されもしないし、伝わることもない。
これは、サプリメントや過剰な清潔ブームに便乗した商品を批判したページでわかりやすく現れている。サプリメントを批判するのならば、正しい食生活や栄養の摂取をよく説明すれば充分なはずである。そうすれば、定理と系の関係のように、サプリメントはほとんど不要であると言うことが自ずから導かれる。商品を叩くことに主眼をおいているので、どうしても、この「定理」の説明が不十分になってしまうし、その商品だけを買わなければよいと言う印象を受けてしまう。また、次々と現れる同様の商品をモグラたたきのように叩かねばならなくなってしまう(4)。もっとも、「正しい食生活」や食品・栄養、保健などに関しての説明が見開き2ページでできるわけはない。
本来ならば、XXXは危険な成分であるから、これらを含んでいる製品を買ってはいけないと言う論理展開をし、タイトルもそれにあわせるべきではないだろうか。トップ企業を叩くよりも、XXXという成分の危険性を消費者に情報提供して、消費者の理解や知識を向上させる方が、方法論としてまっとうなのではないだろうか。「買ってはいけない Part2」が採用している方法論は、私には、単に企業を叩いて(非難して)喜んでいるようにしか感じ取れない。
この特徴と、後に上げる特徴「難癖を付けているとしか言いようのない記述がある」から、ドグマで説明した、三段論法を導いた。
著者らは、「危険性のあるものはたとえ微量でも使ってはいけない」というドグマを持っている。このドグマは、危険性があれば、どのくらいの量が危険なのかは問題とならないから、定量性など全く問題にならないし、当然、量の概念もない。このようなドグマを持っていては、いくら数字を出したとしても、定性的と定量的の違いを著者らは理解していないといえる。「ある物質が毒であるか毒でないかは、その摂取量による。」と言うことを思い出さなければならない。量の概念がなければ次のような文章を書くことができる。
エタノール含有飲料の害はよく知られている。この文章を本気にする人はいないと思うが、こんな文章も書けてしまう。どのくらいの量を摂取すると問題になるのかが重要である。量の概念は非常に重要である。このような危険性のあるエタノールを含んでいる飲料を買ってはいけない(5)。
- エタノールはIARC(国際がん研究機関)の発がん物質に関するクラス分けによれば、グループ1「ヒトに対する発がん性があることが確認されている」に分類されている。
- 中毒性がある。
- 肝臓に負担を掛け、肝硬変の原因にもなる。
- 経口摂取すると、体内でアセトアルデヒドに変質する。アセトアルデヒドのラットの経口LD50は、わずか、1.93g/kgであり毒性がある。このアセトアルデヒドは、合成樹脂や接着剤、防腐剤、香料などに含まれる毒物である。
- 現代労働衛生ハンドブック(労働化学研究所:1994年版)によれば、神経性麻酔作用について、エタノールの麻酔作用はキシレンよりも強く頭痛を伴うとある。
- 平成12年3月の労働安全衛生法の改正で、労働者に健康障害を生ずる恐れのある物(通知対象物)632物質の中に、エタノールが含まれ、健康に障害がある物質として指定された。
- 急性毒性も強く毎年何人もの人が、これが原因で病院に運ばれたり、意識不明になったり、最悪の場合は亡くなったりしている。
- 病院に運ばれないまでも、赤くなったり、吐き気を催したりすることはしばしばある。
- 判断力、感覚を鈍らせこれが原因で事故も多く引き起こされている。
- 摂取すると発育障害を起こすことがある。
- ブドウを原料とする場合、残留農薬の危険性を捨てきれない。
- トウモロコシを原料とする場合、遺伝子組み換え作物が混入していないと完全に否定することはできないかもしれない。
- これ以外にも多くの危険性がある。