タンジブル・ビット

情報の感触・情報の気配

講師:石井裕(MITメディア・ラボ)

 MITメディア・ラボ教授で、GLOCOMフェローでもある石井裕氏をお迎えし、2001年7月4日、GLOCOMコロキウムが開催された。

 情報の単位であるビットは、普通は形を持つものではない。コンピュータの中に存在し、あるいは情報通信ネットワークを介して送受信される、この無形のビットに形を与えること、それが石井氏の主張するタンジブル・ビットである。同氏は、デジタル情報に物理的な形を与えることで、機械と利用者の間のインタフェースが、より実体感のあるものになると考えている。そして、今までのグラフィカルなユーザ・インタフェース(GUI)を、タンジブルなユーザ・インタフェース(TUI)に変革することを目標に研究活動を進めている。

 石井氏は1994年までNTTヒューマン・インターフェイス研究所に在籍していたが、その当時に開発した機器の一つが「クリアボード」である。これはガラス板状の機器で、板の手前にいる通話者と、反対側にいるように見えるが実際には通信回線の向こう側にいる相手とが、ガラス板に図や文字を書きながら議論を進める装置である。通信の力によって、遠く離れた通話者の間に協調的な作業を促す仕組みである。

 この装置を展示したのがきっかけで、石井氏はMITメディア・ラボに招請された。そして、そこでタンジブル・ビットという新しい考え方を打ち出したのが評価され、この度、MITでtenure(終身在職権)のポジションを獲得された。

 タンジブル・ユーザ・インタフェースのいくつかを具体的に見てみよう。「pinwheels」はたくさんの風車を並べたものである。この風車は、MITのサーバーを通過する電子メールのビット列や、ニューヨーク証券取引所の株価の上下に応じて、左右に回転する。その動きは流れる風のようで、普段は気にならないが、動きに何か変化が起きれば人はすぐに気づくという。つまり「pinwheels」は、ビットの流れを目に見えるようにした装置である。

 「inTouch」には3本のローラーがついている。ローラーを回すと、別の「inTouch」にその動きが伝わる。別の「inTouch」側でローラーを止めれば、それが元のローラーに抵抗力を発生する。このようにして、通信回線で接続された二つの「inTouch」の間で情報がやり取りされる。キーボードなどを使用できない障害者でも、「inTouch」を回転させることによって自分の気持ちを表現できるようになる。

 3本のガラス容器を並べたのが、「musicBottles」である。容器のふたを開ければ音楽が流れだす。3本にピアノ、ベース、ドラムを割り付ければ、ジャズが聞こえてくる。「musicBottles」は、“1”と“0”を容器のふたの開閉に対応させただけの簡単な装置であるが、展示会場では多くの観衆が集まり、それぞれ自由に操作し音を楽しんでみているという。

 「I/O Bulb」は、建設設計に利用される。建物の模型を特別の机に置くと、その建物の影が計算されてその机の上に表示される。二つの建物の影がどのように重なるのか等がわかるので、都市設計に便利である。もちろん、コンピュータ画面の上に影を表示することは、以前から行われていた。しかし、コンピュータ上で見るよりも「I/O Bulb」で見るほうが、直感的に理解できる。

 これらの例でわかるように、石井氏は、手に取ることが難しい情報の列:ビットを、具体的に、直感的に表現する技術を研究している。彼は、この研究を進める動機を次のように語っている。

 「将来、「どこでもコンピュータ」の時代が来ると言われている。しかし、どこででもキーボードをたたき、どこででもスクリーンを見ることができるということは、人間の幸福につながるのか。目分量で調味料を入れておいしい料理を作ってくれた母が、http://などと入力して味を調整するようになるとは、私には信じられない。コンピュータとのインターフェースは、もっと人間的になるべきだ。」

 ビットを物質化するという石井氏の研究に対して、「物質をビット化するナノテクノロジーと相互関係を持てば、さらに発展するのではないか」、「科学と芸術の融合領域で活動を進めることの苦労は何か」など活発な質問が続き、コロキウムは盛会のうちに終了した。

山田 肇(主幹研究員)

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