ソロモンとは旧約聖書に登場するダビデとバド=シェバの子供である。在位はBC973〜BC933。BC970〜BC930。BC965〜BC925等々様々な説があるが、40年にわたってイスラエル王国を統治していた王である。 ちなみにこのダビデの家系はヨセフに繋がり、イエスを生む血筋となている。 ではこのソロモンとはどういった王であったのか。 ソロモンは【ソロモンの栄華】といわれるイスラエルの最盛期を築き、統一。さらにエルサレム神殿の建造を行った。王である。 だが、そのような良王の反面、魔術師ソロモンとしても有名なのがこの王である。 上記のように【ソロモンの栄華】といわれるほどの繁栄を築いたこの王の成功には悪魔の力が関与していた、というのだ。 特に名高いのが神の命を受け、建造されたという、エルサレム神殿である。エルサレム神殿の建造については聖書『列王紀』または『歴代誌』に事細かに書かれている。 では聖書『列王記 エルサレム神殿と宮殿の建築5章-9章』の中に書かれているエルサレム神殿の内部についてみてみよう。 『内堂の内部は長さ二十キュビット(一キュビットは肘から中指の先までの間の長さに由来する身体尺)、幅二十キュビット、高さ二十キュビットで純金をこれに着せた。さらに杉材の祭壇にも純金を着せた。ソロモンは神殿の内部を純金で覆い、内堂の前に金の鎖を渡しこれを金で覆った。神殿全体を、隅々まで金で張り、内堂にある祭壇もすっかり金をかぶせた』 とある。 ここから読み取れるようにエルサレム神殿は金で輝く神殿だったのだ。 さらにソロモンは自分の宮殿も金で覆い、エルサレム神殿に劣らぬほどの豪華絢爛さで完成させていたのだ。 このような建築からも民衆がソロモン王の技術、豪華さに魔術という言葉を当てて考えてもおかしくは無いはずである。 だが、魔術師ソロモン王の伝説はこのような事から形を持ったのではない。 ではどういった事からソロモンの魔術師伝説が形を持ったのか。 このエルサレム神殿には神から七年で完成させるように命を受け、さらに、ソロモンは鉄でできた工具の使用も禁止されていたのである。 ではまずこれがどれほどの事か考えてみよう。 まずエルサレム神殿に使われたといわれているダビデが集めた貴金属の量は「金3,400トン、銀34,000トン、量りきれないほどの青銅、鉄、また木材、石材、あらゆる宝石」と、『歴代誌22:14〜16、29:2〜5』にある。 では少し例を挙げてみようか。 日本で金でできた建物といわれれば何を思い浮かべるだろうか。 私はまず金閣寺を思い浮かべてしまう。ではこの金閣寺に使われている金はどれほどの量なのだろうか。 金閣寺の金は普通に張る金より少し厚くなっていて0.45〜0.55ミクロンほどの厚さがある(普通は0,1ミクロン程)。しかし、あの建物の大きさで、張られている金の量はなんと20キロしかないのである。 では話を戻して、金3,400トンとはどれほどのものなのだろうか。 単純計算最近の価格で表すとしたら金をグラム2500円で考えると8兆5000億円ほどの量になる。 聖書等によくある誇張表現だとしてもこれは多すぎないだろうか? このような金を加工し、上記のような大きさの神殿を鉄の工具を使わず作ることが人間に可能なのだろうか? この疑問こそ魔術師ソロモンの伝説が生まれたゆえんである。 まず、ソロモンはこの不可能を可能にするため、シャミールという巨大な怪虫を鉄工具の代わりに使う一案出す。 このシャミールは石を望む大きさ、形に切り取れるといった力を持った怪虫であり、『ソロモン王の小さな鍵』の4柱の1柱とも言うべきアスモダイ(別称:アスモデウス)の支配下に置かれている悪霊軍団の悪霊であった。 そして、その悪霊を使役することができたソロモンは、さらに多くの悪魔を使役し、この不可能な建築を可能にしたのだ。 さらに、ソロモンの建築はこのエルサレム神殿だけではなく、13年で立てたと言われる『王の宮殿』なども建築に成功している。 ちなみにソロモンが使役したシャミールの記述については聖書の中に『工事中、槌や斧、そのほか鉄の道具の音は一切神殿のなかでは聞かれなかった』とある。 さて、このように魔術師としてソロモンはさまざまな悪魔、悪霊を使役し、国を豊かにしていったが、そのイスラエル王国も衰退の道をたどることとなる。 この衰退の原因を作ったのもほかならぬソロモンであり、ここからも悪魔信仰が不幸を招くと言う思想が伺える。 ちなみにイスラエル王国の衰退はソロモンが老後、異教の神々を容認し、それらの祭壇を建設することによって、有一神である神の怒りを招くことから始まります。 有一神である神は、ソロモンに『あなたの息子の代に王国を引き裂く』と宣告し、その宣告どうり、彼の子レハブアムの代に王国は分裂し、衰退の一途を辿る事になります。 神に愛されたソロモンによって繁栄を極めた統一イスラエル王国は、ソロモンの背信行為が原因となり、その死と共に栄華の幕を閉じたのだ。 では、ソロモンが亡くなった時彼に仕えていた悪魔達はどこへいったのか? それはソロモンの手によって真鍮性の壷に入れられ、その悪霊軍団と共にバビロンの深い湖の底に沈められたのだ。 ソロモンがなぜ、このように自分に仕えた悪魔を封印したかという記述は残っていないが、一説によると、悪魔達の力の過信。さらにはそれによる驕りのためだったという。 では、なぜ今。現代我々魔術師達がこのソロモンの封印した悪魔達を使役することができるのか。 それは、まさに我々はバビロニアの人々に感謝せねばならないだろう。 悪魔達が封印されていたこの壷は数百年経った後、バビロニアの人間に深い湖のそこから発見され、こじ開けられたのだ。 これも正確な記述が無いので、なんともいえないが、ソロモンの沈めたのは金銀財宝ではなかったのだろうか?と考えたからだそうだ。 まぁ、豪華絢爛を極めた神殿を建築しているソロモンなら、そういった財宝を沈めていてもおかしくは無いだろう。 だが、私はこう考える。 ソロモンの使役していた悪魔達はもちろん力の弱い者達ではない。中にはカミオのように元天使だった者もいれば、アスモダイなど、完全無欠の力を持ったものまでいる。 では、そのような壷を一介の人間がこじ開けることが可能であろうか? 答えはNOである。 たとえ物質的にあけることができたとしても。封印されている悪魔達を解放するまでには至らないのが、普通である。 では、なぜ悪魔達は解放され、それぞれの棲家へ帰ることができたのか。 それは、まさにソロモンと同等。または名のある魔術師が何人も集まり、再度その悪魔の力を借りなければならないようなことがあったから、封印を解いたのだ。 これが私の考えである。 そして、我々はこのどちらか。ただの物欲でソロモンの壷を開けた人間か、偉大なる魔術師のおかげで、再度ソロモンの使役していた悪魔達の力を借りることができるようになったのである。 さて、私は上記であえて72と言う数字を使わなかったが、『ソロモン王の小さな鍵』に出てくる悪魔の数は72柱である。 私が参考にしていた資料には、ソロモンが使役していた悪魔の数が72と出てくる部分があったが。これは少々間違えが生じてくる。 少々と書いたのは、間違ってはいないのだ。いや、正確にはわからないのである。 もしかしたら72柱かもしれない。それ以上かも知れない。それ以下かもしれない。正確な記述が無いのである。 では、なぜ72という半端な数字に収まったか。 それはさまざまな魔術的思想が関係してきていて、ゲマトリアという数秘術という方法を使い(セムハメフォラシュとも)神名YHVHの綴りを変えてできる名前のバリエーションであったり、、神と地上を結ぶヤコブの梯子に照応する72人の天使の名前にも関連付けられており、それに対応したのが72の悪魔ではないかといわれる。 さらに占星術の見地から鑑みると、十二宮図を各々5度の円弧で6分割し(占星術において「フェイス」と呼ばれるもの)、360÷5=72の区画になり、その数が72になるという説もある。 さらにさらに見てみると中国に端を発する七十二候という暦もあり、また陰暦の1年360日は、五行の5で割ると、72となるので縁起の良い数字とされていたとか。さまざまな魔術思想に72という数字が見られるのだ。 大抵は、良とされていることの数字が72とされているが、悪魔の数が72となったのは、その裏面に潜む闇を、光と同数にさせることによって、均衡を図ったのではないか。という説もある。 以上が『ソロモン王の小さな鍵歴史的考察』である。 参考資料 『魔道書ソロモン王の鍵 護符魔術と72人の悪魔召喚術』『無極庵 Goetia』『Truth In fantasy 50 魔法・魔術』 参考サイト 『魔術サイト 銀の月』『百科事典 wikipedia』『ソロモン七十二柱の魔王』